研究室紹介

研究室の設立に際して

 私、若山尚之は大学を卒業後、総合設計事務所である株式会社日本設計において環境・設備に関する設計業務に携わってきました。設計対象は事務所ビルや幼稚園・小中学校・大学に至る各種学校校舎、商業ビルなどの身近な建物から、病院、研究施設といった特殊な設備を整備しなければならない建物、そして温浴施設、プールや水族館といった水を扱う施設など、用途としては多岐にわたる分野を経験してきましたし、規模としても機械設備担当が1人しかいない九州支社での勤務を行ったこともあり、数百㎡の小規模な付属建物から10万㎡超の大規模施設までプロジェクトとして経験してきました。このような経歴を活用するフィールドとしては大学での建築教育が最も有効な場所であると考え、本学の教員に転身しました。

 大学から社会に出る際に前職である日本設計を志したのは入社当時に社長であった池田武邦氏の環境を重視した経営(設計)方針に共鳴したのが全ての発端でした。実際、日本設計での設計は環境重視型であり、昭和の時代から今日の世界のトレンドを先取りしたものでした。その姿勢は本学に移った現在も引き継いで実践しており、講義では最先端の省エネ型空調関連システムのレクチャー、設計演習では計画立案における環境負荷低減の具体的なアドバイス等、自分の経験を活かした環境教育を実践しています。また、それと同時に環境・設備、とりわけ低炭素型空調・熱源システムに関する研究を行っており、環境・設備の分野で「教育」と「研究」に取り組んでいます。

※日本設計の名誉会長池田武邦氏は22年5月15日に逝去されました。心よりご冥福をお祈りいたします。

研究分野及び教育方針

教育方針イメージ

 若山研究室は本学建築学科においては「環境・設備系」であり、「健康と安全を確保した持続可能な社会・生活環境の創造」を目的として、研究室の発足以来環境設備工学、すなわち建築熱源、地域熱供給、室内環境などを研究対象としてきました。中でも再生可能エネルギーの一つである地中熱利用技術については、基礎杭利用型地中熱ヒートポンプシステムを導入した複数の事例について継続的に研究を深めてきており、最先端の技術を素材に更なる技術の発展に取り組んでいます。また一方で水族館の水処理設備のような日常生活では関わることのないシステムについても研究対象として取り上げてきており、研究レベルの維持、向上を心がけています。また、所属学生に対する教育面においても、このような幅広い分野の環境設備に関わることで実務に関しての理解を深めるとともに深く掘り下げて考えることができる人間形成を目指しております。

研究に対するスタンス

目標イメージ

 大学という教育研究機関の一員として環境設備に関する研究に取り組む上では、基本的な方針を掲げ、そのスタンスを貫徹する気構えで教育・研究に取り組んでおります。

(1)種まき

 研究であれ何であれ(1)種まきをしないことには始まりません。本研究室では近年、学生の発案による研究テーマも続々と動き始めており、学生自らが種、いわゆるシーズを生み出す取り組みは今後拡充していく予定です。更に建築業界における本質的な問題解決にも寄与する目的で企業と連携した研究についても随時行ってきています。

(2)萌芽

 植えた種も水やりをしなければ決して(2)萌芽しません。研究においては研究に取り組めるだけの素養としての基礎学習を研究初期に繰り返し行い、力を蓄えます。

(3)成長

 研究の意義、価値を理解した上で学生自らが主体的に研究に取り組むことで、学生自身が成長すると同時に研究も(3)成長し、実体を伴うものへと濃縮、熟成していきます。

(4)収穫 

 そして、学生が成長すると共に研究も成果として大きくなり果実として(4)収穫するときがやってきます。


卒業生の主な進路

例年、ゼネコン、サブコンを中心に就職先が決まっていきます。規模も大手から小規模な地域密着した企業まで多様な選択枝となっています。2021年度卒業の学生では(7人/10人)が設備工事会社、ゼネコン(1人)、リース会社(1人)、大学院進学(1人)に決定しました。2022年度は設備工事会社5名、ゼネコン1名、大学院進学1名、その他4名でした。2023年度は設備工事会社5名、ゼネコン1名、設備設計事務所1名、公務員1名、修士課程進学4名でした。